遺言相続は鳥取の中尾泰雅行政書士事務所にご相談ください。

相続の手続き

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相続手続きの流れ

相続の手続きは、遺言が無い場合、通常次のような流れになります。遺言があれば、遺言の内容に従って相続することになります。

① 被相続人の死亡=相続開始

医師に死亡診断書を書いてもらいます。医師の立会以外の死亡の場合、警察を呼んで検死をする場合もあります。死亡診断書(又は死体検案書)を添えて死亡届を7日以内に市区町村役場に提出します。提出すると「埋火葬許可証」が発行されますので、それを火葬場に提出し遺体を火葬します。

② 遺言書の確認

ご家族が亡くなられたら、速やかに故人が遺言書を遺しているかどうか確認します。遺言書があれば、遺言内容に従って相続することになります。遺言がなければ、以下の手順で相続の手続きを進めます。

③ 法定相続人の調査・確定

被相続人及び相続人の戸籍謄本等を本籍地の市町村役場から収集して調べ、法定相続人を確定します。

※収集する戸籍謄本等とは、被相続人の死亡から出生まで遡った除籍謄本、戸籍謄本及び相続人の戸籍謄本などです。

④ 相続財産の調査・確定と評価

被相続人名義の財産について資料を収集し、相続財産を確定評価し財産目録を作成します。

※収集する資料としては、不動産に関しては登記事項証明書、名寄帳、固定資産評価証明書(固定資産課税通知書)、土地建物の賃貸借契約書など。預貯金については預貯金通帳、預貯金残高証明書、取引履歴など。有価証券は通知書や取引明細書などです。

⑤ 遺産分割協議

法定相続人が2人以上(共同相続人という)いるときは、当事者間で遺産分割協議を行い、協議が成立すれば「遺産分割協議書」を作成して相続財産を分割します。

遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立て、それでも決まらなければ審判によって決定されます。

⑥ 遺産分割の実行

遺産分割協議又は調停もしくは審判の結果に従って遺産分割を行います。相続人は、預貯金、株式、自動車、不動産など相続した財産の名義変更や登記などを行います。

⑦ 準確定申告

被相続人の所得税の申告が必要な場合は、死後4か月以内に、相続人が準確定申告を行います。

⑧ 相続税の申告・納付

相続税を支払うほどの相続財産があれば、死後10か月以内に、各相続人は「相続税の申告・納付」をします。

 

相続以外の各種手続き

遺産分割にかかわらず行わなければいけない各種手続きがあります。例えば以下のようなものです。

  • 世帯主変更届(14日以内に市区町村役場)
  • 公共料金の名義変更
  • 運転免許証、健康保険証、各種会員証、クレジットカードなどの返却や解約
  • 年金の停止手続き、遺族年金の請求手続き
  • 生命保険の死亡保険金の請求
  • 健康保険の葬祭費(埋葬料)の請求

これらの手続きや届出をしないまま放っておくと、生活に支障をきたしたり、不都合が生じる場合があるので、できるだけ速やかに処理することが必要です。また期限があるものは期限内に行いましょう。

☑ワンポイントアドバイス

手続きや届出を漏れなくスムーズにこなすには、手続きすべき項目のリストを作成してチェックしていくことをお勧めします。すぐできるものや期限のあるものを優先して進めます。

その際、次のように分けてひとつひとつ片づけていけば漏れも防げます。

  1. 電話で済むもの
  2. 電話をして書類を取り寄せてから手続するもの
  3. 役所など窓口まで出向く必要があるもの

 

相続の基礎知識

相続とは

相続の開始

相続とは亡くなった人の財産(遺産)を引き継ぐことをいいます。亡くなった人を「被相続人」、財産を引き引き継ぐ人を「相続人」といいます。

相続は死亡によって開始します。被相続人が死亡した瞬間に相続は開始されます。例えば、子どもが親の死亡を知らずに数カ月経過していたとしても、相続はすでに開始していることになります。

病院や自宅で亡くなった場合は、医師が死亡時刻を確認しますから、その時点で相続が開始することになります。事故死の場合は、検死によって死亡確認がなされ、相続が開始します。

身内が死亡したときは、7日以内に同居の親族などが住所地の市区町村役場へ「死亡診断書」(死体検案書)を添付して「死亡届」を提出します。死亡届を提出すると「埋火葬許可証」が出されます。

相続人と相続権

 法定相続人

人が亡くなったとき、誰が相続人になれるのかは民法という法律に定められています。相続人になれる人のことを「法定相続人」といいます。法定相続人には、死亡した人(被相続人)の配偶者と、被相続人と血縁関係にある親族(血族相続人)のふたつがあります。

血族相続人には、被相続人の子、孫、ひ孫などの「直系卑属」と、父母、祖父母などの「直系尊属」、さらに兄弟姉妹などがあります。

配偶者は常に相続人になりますが、血族相続人には相続する優先順位があり、先順位の血族相続人がいる場合には、後順位の血族相続人は相続人になれません。また、異なる順位の血族相続人が同時に相続人になることもありません。

✅血族相続人の優先順位

血族相続人の相続する順位は次のように決められています。

  1. 直系卑属(子、孫、ひ孫)
  2. 直系尊属(父母、祖父母)
  3. 傍系血族(兄弟姉妹、甥、姪)

☑配偶者の相続権

配偶者は、血族相続人の有無にかかわらず常に相続人になります。別居状態にあったり離婚訴訟中でも、戸籍上、配偶者の地位にあれば相続権は失われません。内縁の妻、愛人、同棲者は、戸籍上配偶者ではありませんから相続権はありません。

夫が亡くなった後、妻が元の姓を名乗っても(「復氏」という)、また再婚しても相続権はあります。つまり、被相続人が死亡した時点で戸籍上で配偶者であれば、死亡後の配偶者の行為は相続権に影響しないということです。

胎児の相続権

夫が死亡した時に妻のお腹に子(胎児)がいた場合は、その胎児は第一順位の子として相続権があります。ただし、母体から子の体が全部出た時に生きていることが条件です。死産の場合は、もともと胎児がいなかったものとみなされます。

養子の相続権

養子とは、親子としての血のつながりはなくても、法律的に親子関係になったものをいいます。養子には、「普通養子」と「特別養子」とがあります。養子縁組をするには市区町村役場に届け出る必要があります。

特別養子縁組とは、実親との親族関係を断ち切ることによって新しい養親との関係をつくり、養子の利益を図るものです。特別養子縁組をするには、家庭裁判所に「特別養子縁組申立書」を提出し、審判を経て認められる必要があります。

普通養子も特別養子も養子縁組が成立すると、その日(届け出た日)から実子扱いとなり、養親の「第1順位の子」として相続権を持つことになります。

普通養子の場合は、実親と養親の両方から相続できますが、特別養子の場合は、実親との親族関係が断たれますので、実親の相続はできません。養親からの相続だけとなります。

非嫡出子の相続権

法律上の婚姻関係にある配偶者との間に生まれた子を「嫡出子」といいます。そうではなく婚姻関係にない人との間に生まれた子を「非嫡出子(または婚外子)」といいます。

非嫡出子が相続権を得るには、その父親が自分の子であることを認めて「認知」しなければなりません。

認知は、届け出(認知届)、または遺言によってすることができます。これを任意認知といいます。

一方、父親が認知をしないときは、子(非嫡出子)や、その子が未成年者である場合は、母親が家庭裁判所に調停・審判を申し立てて認知を求めることができます。それでも認められないときは、家庭裁判所に訴えることになります。

また、父親の生前の届け出による認知も、遺言による認知もなくて父親が亡くなったときは、死後3年以内ならば検察官を相手に認知の訴えを起こし、判決によって認知させることが可能です。(強制認知)

非嫡出子の相続分は以前は嫡出子の半分でしたが、民法の改正により現在(平成25年9月5日以降)は同等となりました。

詳しくはコチラ⇒民法の一部が改正されました(法務省)

連れ子の相続権

なお、連れ子には相続権はありません。夫と妻の連れ子の間には血縁関係がないからです。

連れ子が新しい夫の相続権を持つためには、夫の生前に養子縁組をして実子となることが必要です。また遺言という方法もあります。

代襲相続

親よりも子が先に亡くなるということがあります。このような場合には、亡くなった子の子が相続することになります。これを「代襲相続」といい、その人を「代襲相続人」といいます。

このため被相続人(亡くなった人)の第1順位である子がすでに亡くなっている場合には、その子(被相続人の孫)が代襲相続人となります。代襲相続人となる孫も死亡している場合には、ひ孫が代襲相続人(再代襲相続)となります。

第1順位の直系卑属に代襲相続人がいないときは、第2順位の直系尊属が相続人となります。父母が死亡しているときは祖父母に相続権が移ります。しかしこれは代襲相続とはいいません。代襲相続とはあくまで直系卑属が相続する場合をいいます。

兄弟姉妹が相続する場合、その兄弟姉妹が死亡しているときは、その子(被相続人の甥や姪)が代襲相続人となります。ただし、兄弟姉妹の場合は、代襲相続はその子(甥や姪)までです。

 

相続欠格

「相続欠格」とは、法定相続人が相続において違法行為を行った場合に、その相続権をはく奪することをいいます。

相続欠格となる欠格事由には5つあります。

相続欠格の事由

  1. 故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を殺したり、殺そうとして刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知りながら告発せず、または告訴しなかった者
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、取り消し、または変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、取り消させ、または変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者

相続欠格となると

欠格事由に該当した法定相続人は、特に裁判所に申し立てるなどの手続きをしなくても、当然に相続権を失います。

ただし、相続欠格者に子や孫などの直系卑属がいるときは、その子や孫が代襲相続人として相続することができます。兄弟姉妹が相続人で相続欠格となったときには、その子(被相続人の甥や姪)までは代襲相続人として相続ができます。

なお、相続欠格は、ある特定の被相続人の相続についてだけ生じるものです。例えば、父の相続に対して相続欠格となっても、母の相続については影響しない(母の相続まで欠格者とはならない)ということです。

相続廃除

相続廃除とは

相続廃除とは、被相続人の意思によって相続人の相続権を奪うことをいいます。相続廃除の請求ができる場合として、民法では次のような場合を定めています。

遺留分を有する推定相続人(相続開始時に相続人となる人)が、

  1. 被相続人に対して虐待をしたとき
  2. もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき
  3. その他著しい非行があったとき

遺留分を有する推定相続人とは、被相続人の配偶者、子・孫などの直系卑属、父母・祖父母などの直系尊属のことで、相続財産のうち一定割合を相続できる権利(遺留分)を持っている相続人のことです。遺留分のない兄弟姉妹やその子(甥、姪)は廃除の対象となりません。

相続廃除の手続きとその効果

相続廃除の手続きとしては、

  • 被相続人自らが生前に家庭裁判所に廃除の請求をする。
  • 被相続人が遺言で廃除の意思表示をする。(遺言書に書く)
家庭裁判所に請求した場合

家庭裁判所が慎重に検討して廃除事由を認めれば廃除が確定しますが、すべての請求が認められるわけではありません。家庭裁判所で廃除が確定すると、その推定相続人は相続権を失います。推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時点に遡ってその効力を生じます。

遺言書で廃除の意思表示をした場合

遺言書に特定の推定相続人の廃除の意思表示をした場合は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求を行い、決定されます。

ただし、上記のいずれの場合でも、廃除が確定して相続権を失った推定相続人の子は、代襲相続人として相続権があります。これは相続欠格者の子と同様の扱いとなります。

廃除の取消し

家庭裁判所の決定によって廃除が確定した後、廃除を取り消したい場合には、被相続人自らが家庭裁判所に廃除の取消しを請求できます。また、遺言によって取り消すこともできます。

被相続人が廃除の取り消しをすれば、廃除が確定した推定相続人の相続権は回復します。

 

相続人の不存在

相続人不存在とは

相続人がいない「相続人不存在」とは、相続人が全員死亡していたり、相続放棄や相続欠格者、相続廃除者でその代襲相続人もいない場合をいいます。

しかし、よく調べてみないと本当に相続人がいないかは即断できません。被相続人の親の戸籍まで遡って兄弟姉妹がいないかどうか確認する必要があります。また、戸籍の記載が漏れていたり、認知の請求前の子がいないとも限りません。

もし被相続人に兄弟姉妹がいたり、その代襲相続人となる甥や姪が一人でもいれば、その人の所在や生死が不明でも相続人不存在にはなりません。

相続人の存在が明らかでない場合の手続き

相続人のあることが明らかでない場合は、相続財産を一種の法人とし、債権者などの利害関係者や検察官の請求によって家庭裁判所が相続財産管理人を選任することとなっています。

選任された管理人は、相続財産の管理や清算手続きに入ります。その流れは次のようになります。

  1. 家庭裁判所が相続財産管理人を選任したことを官報に公告する。(第1回目の公告)
  2. 第1回目の公告後、2か月以内に相続人が現れなければ清算手続きを開始し、債権者や遺言による受遺者などに一定期間(2か月以上)に申し出るように官報に公告する。(第2回目の公告)
  3. このとき債権者などの相手先が判明していれば個別に通知する。また、この時期までに相続人が現れれば相続を開始する。
  4. 第2回目の公告に定められた期間を経過しても相続人が明らかにならないときは、さらに一定期間内(6か月以上)に相続人である権利を主張するよう官報に最終の公告をする。(第3回目の公告。「相続人捜索の公告」)
  5. 第3回目の公告によっても相続人が現れなければ、「相続人不存在」が確定する。これによって申し出なかった相続人、債権者、受遺者はその権利を失う。
  6. 相続人不存在の確定後、3か月以内に特別縁故者の申し出があれば、家庭裁判所は財産分与の審判を行い、特別縁故者へ分与する。
  7. 残った相続財産は国庫に帰属する。

特別縁故者への財産分与

家庭裁判所が3回の公告を行っても相続人が現れなかったときは、特別縁故者への財産分与が認められます。

特別縁故者とは、法定相続人ではないが、被相続人と親しい関係にあった人や援助をしていた人などのことで、以下のような人や団体が該当します。

  • 被相続人と生計を共にしていた内縁の妻
  • 事実上の養子
  • 被相続人の療養看護に努めた看護師、ヘルバー
  • 被相続人を精神的、経済的に支えてきた友人、知人、隣人
  • 老人ホーム
  • 市区町村
  • 自治会
  • 菩提寺

特別縁故者が財産分与を望む場合には、公告期間満了後3か月以内に自ら家庭裁判所に分与の請求をします。

 法定相続分

「法定相続分」とは、民法で定められている各相続人の相続分のことをいいます。これに対して、遺言で被相続人の意思によって定められた相続分を「指定相続分」といいます。

法定相続分の割合

法定相続分は、誰が相続人になるかによって決まっています。

1.配偶者と子

配偶者と子のときは、配偶者が2分の1、子が2分の1となります。子が複数いれば頭数で均等に割ります。

2.配偶者と直系尊属

子や孫などの直系卑属がおらず、配偶者と被相続人の父母などのときは、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。

3.配偶者と兄弟姉妹

直系卑属も直系尊属もおらず、配偶者と被相続人の兄弟姉妹のときは、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

兄弟姉妹間の相続分は、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹)は、父母の両方を同じくする兄弟姉妹の2分の1となります。

4.配偶者がいないとき

配偶者がいないときは、子ども間、直系尊属間、兄弟姉妹間で均等に相続します。ただし、半血の兄弟姉妹については、2分の1となります。

 

特別受益

特別受益とは

被相続人が生前に特定の相続人に多額の贈与をしたり、遺言で遺贈した場合は、それを考慮しないで財産を分けると不公平になりますね。

そこで民法では、相続人の公平を図るため、贈与や遺贈された分は「特別受益」として相続財産に加えて算定するとしています。これを「特別受益の持ち戻し」といいます。

贈与で特別受益になる場合

1.婚姻もしくは養子縁組で受けた贈与
  • 結婚のために多額の家財道具の購入や持参金を出してもらった場合
  • 特別に盛大な挙式費用を出してもらった場合
  • 養子に行くにあたり多額の金銭を贈与された場合

2.生計の資本として受けた贈与

  • 戸建て住宅やマンションを買ってもらったり、その資金を相当額出してもらった場合
  • 事業用の店舗を新築したり、多額の営業資金を出してもらった場合
  • 数年間の海外への留学費用

特別受益の評価

特別受益は相続開始時(死亡時)の価額で評価します。現金は贈与額が原則ですが、貨幣価値の差が大きければ現在価額で計算し直します。不動産は相続開始時の時価となります。

特別受益には時効がありません。何十年も前に受けた贈与も対象となります。

 

寄与分

被相続人(故人)に特別に貢献などをした人は相続分を増加してもらえます。この貢献分を「寄与分」といいます。

例えば、被相続人の相続財産の維持・増加に貢献したり、被相続人の療養看護に努めたなどの場合です。この寄与した相続人(特別寄与者)が他の相続人と相続分が同じではかえって不公平なことになります。そこで民法では「寄与分」というものを認めているのです。

特別寄与者に該当する例は次のとおりです。

特別寄与者

1.事業に関する労務の提供または財産上の給付

農業や商店、工場経営をしていた被相続人の事業を無償で手助けした人、営業資金などを無償で貸与、給付した人などです。相当の給料をもらっていた場合は特別の寄与にはあたりません。

2.被相続人の療養看護、その他

仕事を犠牲にしてまで病気の親の世話を続けてきた人、ヘルパーなどの費用がかかる人を雇わないで入院の付き添いをしてきた人などです。この場合も、同居で生活費を被相続人が負担していた場合は特別の寄与にはあたりません。

なお、寄与分を主張できるのは相続人だけです。ただし、夫婦間での協力義務や内助の功は、同居・扶助の義務があるので、特別な寄与とはいえません。

寄与分の決定

特定の相続人が特別寄与者に該当するか、また、その寄与分はどの程度の額に相当するかについては、遺産分割協議などの場で、相続人同士(共同相続人)で話し合って決定することになります。

相続人同士で協議しても決まらないとき、または協議ができないときは、特別寄与者が家庭裁判所に調停を申し立てて解決を図ることになります。調停でも決まらなければ、審判によって決定されます。裁判所は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して寄与分を定めます。

寄与分がある場合の法定相続分の計算

はじめに全部の相続財産から寄与分をいったん差し引き、その相続財産を法定相続分で分けた後に、特別寄与者の法定相続分に寄与分を上乗せします。

ですので、寄与分の額は、相続財産の額から遺贈の額を控除した額を超えることはできません。なぜなら相続財産がマイナスとなって何も残らず、相続人が何も相続できなくなるからです。

 

相続の3つの選択

相続人は相続開始のときから、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになっています。ですので、不動産や預貯金、現金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も同時に相続することになります。

ですので場合によっては、差し引きで借金だけ相続する場合もでてきます。これは不合理であるという考えから、民法では相続するかどうかは相続人の自由意思に任せています。

そして、相続する際に「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の3つの選択肢を認めています。

単純承認

単純承認とは、被相続人の権利義務の一切を承継することです。相続開始後、何も意思表示をしなければ自動的に相続を承認したことになります。また、次の行為も単純承認とみなされます。

1.相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合(ただし保存行為は除く)

2.相続人になったことを知った日から3か月以内に限定承認も相続放棄もしなかった場合

3.相続人が相続放棄または限定承認後に、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私に消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき

 

相続放棄

相続放棄とは

相続放棄とは、すべての相続財産の承継を拒否することです。主に借金などマイナス財産の方が多い場合に行いますが、相続人の一人にすべてを相続させたいときに、他の相続人が相続放棄をすることもあります。

相続放棄の手続き

相続を放棄するには、自分が相続人となったことを知った時から3か月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。相続放棄の申述が受理された後は、相続放棄の取消しはできません。ただし、詐欺や強迫によって相続放棄申述書が出されたときは取消しが可能です。

この3カ月間を熟慮期間といい、その期間内に相続財産を調査して放棄するかどうか決めます。調査が困難で時間がかかりそうな場合には延長の申立てもできます。

熟慮期間の3か月を過ぎて放棄をしなかった場合でも、それが相続財産が何も無いと信じたためであり、かつ、そう信じる相当の理由があると認められるときは、相続財産の存在を認識したときが熟慮期間の始まりとされています。

未成年者の相続放棄

未成年の子が相続放棄する場合は、基本的に代理人が必要です。

親権者である親(たとえば母親)も相続人で、母親も放棄するときは利害関係が生じないので母親は法定代理人として手続きができます。しかし、母親が放棄しない場合には、母親は法定代理人にはなれません。そうなると子には裁判所で特別代理人を選任してもらう必要があります。

相続放棄の影響

相続放棄をすると、その相続については、初めから相続人とならなかったとみなされます。そのため相続放棄をした人の子には代襲相続がありません。

そのため、例えば相続する第1順位の子がすべて相続放棄すると、直系卑属の代襲相続ができなくなるため、相続権は配偶者と直系尊属になり、相続割合にも影響します。また、配偶者も直系尊属も亡くなっていると、兄弟姉妹が相続することになり、場合によってはマイナスの財産(借金など)を相続することになります。

このように相続放棄をすると、思わぬ影響が出ますので注意しなければなりません。

 

限定承認

限定承認とは

限定承認とは、相続財産の限度内で清算し、もしプラスの財産があれば相続するという選択のことをいいます。清算して余った財産が少しでもあれば相続できるので、相続人にとっては好都合な選択といえます。

限定承認は、相続財産に土地や建物などのプラスの財産もあるけれど、借金などのマイナス財産も相当あり、最終的にどちらが多いのかわからないときに行います。

また、相続財産の中に他人に渡したくない家宝などがあるときは、家庭裁判所で選任された鑑定人の評価額を限定承認した相続人が弁済すれば取り戻すことも認められています。

限定承認の手続き

限定承認をするには、自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に「相続限定承認申述書」を提出します。この3カ月間は熟慮期間になります。

限定承認申述書を提出する際は、判明している範囲の相続財産や債務の財産目録も必要となります。財産目録に悪意で財産を記載しなかったり、債務を記載しなかったときは、単純承認とされて限定承認が認められません。

限定承認は相続人全員が共同で行わなければなりません。相続人が2人以上のときで1人でも単純承認を主張する人がいると、限定承認はできません。ただし、相続放棄をする人がいる場合は、その人を除いた他の共同相続人だけで限定承認することは認められています。

お気軽にお問い合わせください TEL 0857-30-5619 受付時間 8:30-18:00 土・日・祝日も可

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