2018年7月の民法(相続法)改正によって、遺言執行者の権限が次のとおり強化されました。

改正前は、”遺言執行者は相続人の代理として業務を行う”と規定されているだけで、具体的な権限は法律に明記されていませんでした。

相続登記の申請権限

遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。(改正民法第1014条第2項)

第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為とは、登記などのことをいいます。

法改正後は、特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる遺言で、遺言書の中で遺言執行者が指定されていた場合、遺言執行者は、その相続人に代わって相続登記の申請ができることとなりました。

預貯金の払戻し・解約の権限

前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申し入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。(改正民法第1014条第3項)

前項とは、上記の改正民法第1014条第2項のことです。

特定財産承継遺言がある場合には、遺言執行者は預貯金の払戻や解約ができます。

ただし、遺言で預貯金の一部を相続させるとなっていた場合は、解約できません。預貯金の全部を相続させるとなっている場合には解約できます。

これは、解約という行為が、預貯金の全体に及ぶ行為ですので当然といえます。

なお、遺言執行者が払戻や解約ができるのは、預貯金に限られています。有価証券や投資信託などの金融商品の解約はできません。