遺言は愛のメッセージ
あなたの財産を、大切な家族やお世話になった人に、あなたの意思どおりに譲るために遺言書はとても重要なものです。
遺言書がなかったために、財産をあげたいと思っていた人に財産が渡らなかったり、遺言書があったおかげで、壊れかけた家族の絆をつなぎとめたということがあります。
家族の相続争いを未然に防ぐことができるのは、遺言書があるからなのです。そういう意味で、遺言は大切な人への愛のメッセージだといえます。あなたも遺言書を書いてみませんか?
鳥取中央相談室にご相談ください
当相談室では、遺言相続の専門家である行政書士が、あなたの遺言書の作成のお手伝いをします。遺言書は自分でも書けますが、法律で決められた方式で書かなければ無効になります。せっかく書いたあなたの遺言が、あなたの死後、無効だとされたら取り返しがつきません。
また、公証人につくってもらう公正証書遺言にしても、戸籍謄本や財産を証明する書類、そして証人を最低2人準備しなければいけません。これらも面倒で手間のかかることです。
当相談室では、これから遺言書を作成されるあなたのご相談相手となって、間違いのない遺言書ができるようサポートさせていただきますので、どうぞ安心しておまかせください。
遺言の基礎知識
遺言とは
遺言とは、広い意味では人が生前に死後のために遺す意思表示のことばですが、法律上では一般的に相続についての意思表示のことをいいます。その意思表示を書面に記したものが遺言書です。
相続において遺言は死後の法律関係を指定するもので、民法で定められた「法定相続」に優先します。つまり遺言書があれば、その内容に従って相続することになります。遺言による相続を遺言相続といいます。
遺言の効力
遺言があれば法定相続に優先して相続できますが、遺言で執行できるものは、法律上効力が生じるものに限られます。これを遺言事項といい、民法で定められています。遺言事項については以下のとおりです。
■法的効力が生じる遺言事項
☑相続に関する事項
- 相続分の指定または指定の委託
- 遺産分割方法の指定または指定の委託
- 相続人の廃除または廃除の取消し
- 5年以内の遺産分割の禁止
- 相続人間の担保責任の指定
- 遺贈の減殺方法の指定
- 遺言執行者の指定または指定の委託
☑身分に関する事項
- 非嫡出子の認知
- 後見人および後見監督人の指定
☑財産処分に関する事項
- 遺贈
- 寄付行為
- 信託の設定
付言事項の効果
遺言では、民法という法律の中で法的な効力が生じる「遺言事項」が定められています。しかし、それ以外の事を書いてはいけないということではありません。
遺言は、遺言者が遺族などに伝える最後のメッセージですから、ぜひとも伝えておきたい思いを遺言の中に書きのこすことは意義のあることです。
例えば、「皆には世話になった。家族仲良く暮らすように」というような家族に対する愛情のこもった言葉を書いておくと、法的効果とはまた異なる効果が生まれるかもしれません。
このような遺言事項以外の文言のことを「付言事項」といいます。付言事項の例としては次のようなことが考えられます。参考になさってください。
- 自分亡き後の家族や大切な人への思いや希望
- なぜそのような遺言をしたかの理由
- 生前に言えなかった感謝や謝罪の気持ち
- どうしても伝えておきたいこと
このような付言事項を書き添えることは、法的効力がなくても遺族などの心情に訴えますから相続を巡るトラブルを未然に防ぐ効果が期待できるのではないでしょうか?遺言を書く際にはぜひ検討してみてください。
遺言の必要性
なぜ遺言が必要なのでしょうか?それは相続のトラブルを未然に防ぐことができるからです。
相続財産の多少にかかわらず、自分が死んだ後で相続人の間でもめる心配があるときは、ぜひ遺言を書いておくべきです。
具体的には、次のようなケースが考えられます。参考になさってください。
- 相続人の間に不和があるとき
- 相続させたくない相続人がいるとき
- 配偶者に土地や家屋を遺したいとき
- 子がいないとき
- 先妻の子や後妻の子がいるとき
- 認知していない愛人の子がいるとき
- 介護してくれた嫁に財産分与したいとき
- 婚姻届けを出していない内縁の夫婦のとき
- 親族以外の人に財産を遺贈したいとき
- 一人の相続人に家業を承継させたいとき
- 相続権のない兄弟姉妹に財産分与したいとき
- 財産の一部を公益団体に寄付したいとき
これらに共通しているのは、遺産分割協議や法定相続分に委ねたのでは実質的に公平を欠く場合や、法定相続人以外の人に財産分与(遺贈)を考えている場合です。このようなときには遺言を書いておく必要があるのです。
遺贈とは
遺言では、法定相続人以外の人に自分の財産を分け与えることができます。これも遺言の法的効力のひとつです。
このように、遺言によって財産を無償で譲与することを「遺贈」といいます。もちろん、法定相続人に対する「相続分の指定」や「分割方法の指定」も遺贈になりますが、一般的には相続人以外の人への譲与としての意味合いが強いといえます。
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の二つがあります。
包括遺贈とは
包括遺贈とは、「遺産の2分の1をAさんに」というように、家とか土地とか特定の財産をしてせずに、割合を指定するものです。一方、相続人に対して割合を指定する場合は、「相続分の指定」となります。
そして遺贈される人を「包括受遺者」といいます。
包括受遺者は、民法で「相続人と同一の権利義務を有する」と規定されているので、亡くなられた被相続人の債務も引き継ぐことになります。そこで、他の相続人と同様に相続の放棄や限定承認の意思表示をすることができます。
そして、どの財産を、どれだけ譲与してもらうかは、法定相続人と一緒に遺産分割協議に参加し、話し合いによってその中身を決定することになります。
特定遺贈とは
特定遺贈とは、「○○の土地はAに」あるいは「現金100万円をBに」というように、特定の財産を指定する場合をいいます。そして遺贈される人を「特定受遺者」といいます。
特定受遺者は、包括受遺者のように遺産分割協議に参加する必要はなく、譲与される財産を取得できます。
法定相続人に特定遺贈の指定がある場合は、特別受益として扱われる場合がありますので、特別受益としない旨の遺言も書いておかなければならないので注意が必要です。
遺言の方式とは
遺言は、相続人などの権利関係に大きな影響を及ぼします。そのため法律では、遺言書の作成は決められた方式に従って行わなければならないことになっています。なぜなら、口頭で言ったことや、単なるメモ書きに法的な効力を与えることは、信憑性に欠けトラブルの元になるからです。
法的な効力を持つ遺言とするためには、一定の形式や要件を備えた方式に従って遺言書を作成しなければなりません。法律で定められた遺言には、次の種類があります。
遺言方式の種類
民法で定める遺言の方式には、一般的な「普通方式」と、緊急時等に作成する「特別方式」とがあります。一般的に作成されるのは、自分で書く自筆証書遺言か公証人につくってもらう公正証書遺言です。
それぞれの遺言には利点(メリット)と欠点(デメリット)があります。どの方式の遺言書にするかは自由ですが、いずれにせよ内容をよく吟味して間違いのない遺言書を作成したいものです。
■普通方式の遺言
☑自筆証書遺言
- 全文、日付、氏名を自書して押印します。手軽で費用もかかりません。
- 紛失や盗難、改ざんのおそれがあります。
- 発見後、家庭裁判所で検認の手続きが必要です。
☑公正証書遺言
- 証人2名以上の立ち合いのもと、公証人が遺言者の口述を筆記して作成します。安全で確実です。
- 手続きが面倒で費用もかかります。
- 検認の手続きは不要です。
☑秘密証書遺言
遺言者本人が自筆で作成し署名押印した後、封をして証書に使用した印で封印します。これを公証人と証人2名以上の前に提出し、自分の遺言書である旨と自分の氏名・住所を申述します。公証人は日付と申述された氏名・住所をを封書に記します。誰にも内容を見られることはありませんが、書式など間違いがあった場合には無効になるので注意が必要です。
- 遺言者以外に遺言内容を知られず、改ざんの危険はない。
- 公証人1人、証人2人以上の立会が必要で、費用がかかる。
- 発見後、検認の手続きが必要。
■特別方式の遺言
☑死亡危急者遺言
- 病気やケガで死期が迫っている場合で、証人3人以上必要。
- 遺言の日から20日以内に家庭裁判所の確認を受け成立する。
☑船舶遭難者遺言
- 船や飛行機で死期が迫っている場合で、証人2人異常が必要。
- 家庭裁判所の確認を受けて成立する。
☑一般隔絶地遺言
- 伝染病で隔離されているとき。
- 警察官1人と証人1人以上の立ち合いが必要。
☑在船者遺言
- 船の中にいて一般の人と連絡がとれないとき。
- 船長または事務員1人、及び証人2人以上の立会が必要。
自筆証書遺言
自筆証書遺言の特徴
自筆証書遺言は、遺言者が自分で、いつでも自由に作成できます。遺言の全文、日付、氏名などをすべて自筆で書き、押印すればつくれます。また、公正証書遺言と違い証人も不要で費用もかかりません。
ただし、手軽につくれますが、法律で決められた要件を満たしていないと無効となります。ですので要件をよく知ったうえで慎重に作成する必要があります。また、紛失したり他人に改ざん(書き変えられる)のおそれがあります。
自筆証書遺言の利点と欠点
自筆証書遺言の利点と欠点は以下のとおりです。
自筆証書遺言をお勧めしたい方
- すぐ書きたい人
- 自宅で書きたい人
- 気軽に書きたい人
- 書き直しをしたい人
- 家族に知られないように書きたい人
- 毎年書き直す人
- お金をかけたくない人
自筆証書遺言の利点
- 気軽に書ける
- いつでも書ける
- 秘密が守られる
- 書き直すことが容易
- 費用がかからない
- 証人は不要
自筆証書遺言の欠点
- 遺言書の不備が発生する恐れがある
- 遺言書の管理が難しい
- 遺言書の「検認」が必要
自筆証書遺言の欠点を補うためには、以下のような方法をとることをお勧めします。
- 専門家に自分の書いた遺言書の点検を依頼する
- 専門家に遺言書管理を依頼する
- 専門家に遺言執行者になってもらう
自筆証書遺言の書き方
作成するときの注意点
自筆証書遺言は、以下の要件を満たしていないと、せっかく書いても無効になります。それぞれの要件の細かな注意点をあげてみましたので参考にしてください。
1.すべて自書する
- 遺言の全文は自分で書かなければいけません。
- パソコン等はダメです。
- 代筆もダメです。
- 文体・字体、縦書き・横書きなどの制約はありません。
- 判読しやすいように書きます。
- 書式も特に規定はありません。
- 表題は「遺言書」または「遺言状」と書きます。
- 用紙は、便せん、半紙、原稿用紙、罫紙など長期保存に耐えられるものにします。
- 筆記用具は改変されやすい鉛筆よりもボールペン、万年筆、毛筆などにします。
- 土地、家屋の所在地、面積などは、正確を期すために登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されているとおりに書きます。
2.日付と氏名は必ず明確に書く
- 日付は「平成○○年○○月○○日」「20○○年○月○日」と特定できる日付を書きます。
- 年号のないものや「○月吉日」というような特定できない日付は認められません。
- 遺言は何度でも書き換えることができますが、2通以上発見された場合は、日付の新しいものが有効とされます。
- 氏名も自書します。
- 戸籍上の氏名を書くのが原則ですが、「澤田」を「沢田」とするのは構いません。
- 雅号やペンネームなどは、遺言者と署名者が同一であると確認できれば有効です。
- 本名を書くか、本名を併記するのがベストです。
3.印鑑は実印が望ましい
- 印鑑は、銀行印、認印、拇印でも良いとされていますが実印がベストです。
4.2枚以上になるときの配慮
- 遺言書の枚数に制限はありません。
- 2枚以上のときは、ページ数を入れたり契印を押すなどして、ホチキスなどで綴じます。
- 1通の遺言書であることがわかるようにします。
5.封筒に入れて保管する
- 封筒に入れなければいけないという決まりはありませんが、簡単に人に見られないようにするために封筒に入れて封印するのがベストです。
遺言書の訂正方法
遺言書を書き損じたときには、ふつう書き直します。
しかし、全部を書き直すのが面倒な場合は、部分的に加筆や削除、訂正をすることになります。その場合には、一定の方式に従わなければなりません。訂正の仕方も決められているのです。
訂正の仕方
- 変更した箇所を指示する。
- 変更した旨付記して署名する。
- 変更した箇所に印を押す。
この訂正の仕方は、秘密証書遺言でも同様です。秘密証書遺言も、遺言書の中身は、自分で書く自筆証書遺言であるからです。
その他の注意点
1.保管場所
自筆の遺言書は保管場所が大切です。かといって大切にしまって発見されなくても困ります。自宅の中では、自分の机の中、金庫の中、仏壇の引き出しなどが一般的です。
その他には、遺言執行者や信頼できる人に預けたり、貸金庫などに保管し、そのことを配偶者や第三者などに知らせておく方法もあります。
2.遺言書の検認
自筆証書遺言が遺言者の死後に発見されれば、相続人が家庭裁判所に持参して検認手続きをすることになっています。
「検認」とは、家庭裁判所が遺言書の形式や状態を調査するとともに、偽造や変造、破損、破棄などを防ぐために行う手続きです。
検認を怠って遺言書を提出しなかったり、勝手に開封したり、検認を受けずに遺言を執行した場合は、5万円以下の過料の処分を受けることになります。
ただし検認によって遺言書の効力を認めるわけではありませんので、事前に開封したとしても遺言の効力がなくなることはありません。
検認を受けなくても、遺言が無効になることはありませんが、開封や検認は遺言を公正に執行するための手続きなので、必ず検認を受けることが必要です。
検認を受けるためには、家庭裁判所に「遺言書検認申立書」を必要書類を添えて提出します。
遺言書は家庭裁判所が決めた検認期日に相続人などの立ち会いのもとに開封され、遺言の内容、日付、署名などが「検認調書」としてまとめられます。
この検認調書が無いと、不動産などの登記ができませんので、その意味でも検認は必要といえます。
なお、検認が必要ない公正証書遺言ですが、公正証書遺言が存在するかどうかは最寄りの公証役場で確認できます。
公正証書遺言
遺言には、自分で書く「自筆証書遺言」のほかに、公証人に作成してもらう「公正証書遺言」というのがあります。
公正証書遺言は、2人以上の証人の立会いのもとで、遺言者が口頭で述べた内容を公証人が作成するものです。
公正証書遺言のメリット
公証人は、元裁判官や元検察官だった人で法律の専門家ですので、自筆証書遺言のように要件の不備で遺言が無効になることがありませんので安心です。
また、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されますので、紛失したり改ざんされる恐れがありません。
さらに、家庭裁判所での検認も必要なく、遺言をすぐに執行できます。
公正証書遺言のデメリット
一方、デメリットもあります。
- 証人が2人以上必要である。
- 遺言内容が公証人や証人など他人に知られる。
- 作成に公証人の手数料がかかる。
しかしながら、遺言で財産処分や子の認知など身分関係の処理をするには、最も安全で確実な遺言方式といえます。
公正証書遺言の利点と欠点
公証人に依頼してつくる公正証書遺言の利点と欠点は以下のとおりです。
公正証書遺言をお勧めしたい人
- 遺言書の書き方が分からない人
- 文章を書くことが苦手な人
- 手が動かず遺言書を書けない人
- 遺言した文章に不安がある人
- 複雑な条件付きの遺言書を書く人
- 遺言書の管理に不安がある人
公正証書遺言の利点
- 遺言書の作成に不備がない
- 口述できる
- 公証人が出向してくれる
- 遺言書の管理を公証役場がしてくれる
公正証書遺言の欠点
- 費用がかかる
- 証人が2人以上必要
- 他人(公証人や証人)が内容を知りえるから完全に秘密が守られるとは限らない
公正証書遺言の欠点は、残念ですがどうすることもできません。また事前に準備しなければならないことも結構あります。
欠点を解消する方法
公証人と話をしたり、遺言書作成する際に必要な書類(戸籍謄本や資産証明など)を揃えるのが面倒だということでしたら、当事務所の専門家があなたに代わって段どりしますのでご安心ください。また証人二人の手配もいたしますので、すべてお任せください。
公正証書遺言作成の準備
1.証人の依頼
公正証書遺言の作成には、証人が2人以上必要です。あらかじめ誰かに依頼しておかなければなりません。証人は相続に関係しない信頼のおける人が良いですが、適当な人がいなければ当相談室でご紹介しますのでご安心ください。
ただし、次のような方は証人にはなれないので注意が必要です。
- 未成年者
- 推定相続人(将来相続人となる人)および受遺者(遺言によって遺贈を受ける人)
- 推定相続人や受遺者の配偶者、直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族
- 公証役場の書記、使用人
2.遺言内容の整理、資料の準備
まず遺言内容は事前によく考えて、必要な資料を揃えます。
例えば、不動産を相続させたり遺贈するときは登記簿謄本(登記事項証明書)や権利証が必要です。遺言書に記載する土地、家屋の表示は正確でなければならないからです。
また固定資産評価証明書または固定資産税納税通知書の課税明細も取り寄せます。これは公正証書遺言を作成する際の作成手数料を具体的に算定する際に必要となるからです。不動産の価額(課税評価額)によって手数料が変わってくるからです。
さらに、遺言で財産を取得する推定相続人と遺言者の戸籍謄本や受遺者の住民票も用意する必要があります。
これらの資料は遺言内容を整理した文書とともに、あらかじめ公証人に渡しておく必要があります。なぜなら、当日に遺言内容を正確に述べるのは大変ですし、公証人もあらかじめ準備しておくことができ当日スムーズに公正証書遺言が作成できるからです。
3.遺言者の実印、印鑑証明書
遺言公正証書に押印する印鑑は実印です。印鑑証明書は3か月以内のものを用意します。実印登録していないときや、印鑑証明書を取り寄せる時間がないときは、運転免許証やパスポート、個人情報カードなど官公署が発行した写真入りの証明書と認印を持参します。
4.証人の個人情報と実印、印鑑証明書
証人2名の氏名、住所、生年月日、職業を公証人に事前にしらせておきます。証人の印鑑は実印で、印鑑証明書をつけます。
以上のような準備をはじめ、公証人との打ち合わせなどは当相談室が一切サポートしますので、どうぞ安心してお任せください。
公正証書遺言の作成
公正証書遺言がどのような手順で作成されるのかご説明しましょう。
- 証人2人以上の立会いの上、遺言者が公証人に遺言の内容を口頭で述べます。これを口授といいます。
- 公証人はこれを筆記して、筆記した内容を遺言者および証人に読み聞かせます。(あるいは、閲覧させます。)
- 遺言者および証人が筆記の正確なことを承認した後、各自が署名し押印します。
- 公証人が方式に従って作成した旨を付記した後、署名、押印して作成が終了します。
- 遺言公正証書は、原本と正本が作成され、原本は公証役場で保管し、正本は遺言者に渡されます。
公正証書遺言の作成は、通常は公証役場に出向いて行います。しかし、重病の場合や動けない場合には、病院や自宅に公証人が出張することもあります。
また、口がきけない人や耳が聞こえない人も筆談や通訳を介して作成できます。その場合は、公証人がその旨を公正証書に付記します。
以上が公正証書遺言の一般的な作成手順ですが、もちろんぶっつけ本番で作成できるわけではありません。作成当日までに準備しておく資料や、2人に証人を依頼しておかなければなりませんし、公証人と事前に日程調整や打ち合わせをしておく必要があります。
公正証書遺言の手数料
公正証書遺言を作成するには一定の手数料がかかります。手数料は、遺言の目的である財産の価額に対応して金額が決まっています。なお、消費税はかかりません。
手数料については、次の日本公証人連合会のホームページの手数料をご覧ください。
ただし、相続財産の額や、相続人数、遺贈人数によって規定がありますので、具体的に手数料を知りたい方は最寄りの公証役場に問い合わせるか当事務所にお問い合わせください。
遺言の撤回と変更
遺言の撤回
一度書いた遺言は撤回できるか、という疑問があると思いますが、答えはイエスです。いつでも、何回でも撤回や変更ができます。
それはそうです。遺言書を書いた後に心境の変化もあるでしょうし、財産の内容も変わる可能性があるからです。
遺言書の場合、新しい遺言書が優先するので、日付が重要となります。日付が後の遺言書の方が新しい正当な遺言書とみなされます。
遺言の撤回や変更は、新たに書く遺言書が要件にかなったものであれば、どの遺言方式でも構いません。自分で書く自筆証書遺言でも、公証人に作成してもらう公正証書遺言でも構いません。
自筆証書遺言の場合には、前の遺言書を破棄するだけで撤回したことになります。そして新たな遺言を書けば良いのです。その際には、「前の遺言を次のように変更する」などと明記すれば万全です。
ただし、前につくった遺言書が公正証書遺言の場合には、手元の正本を破棄するだけでは撤回が認められないこともあるため、その内容の全部又は一部を撤回して変更しようとするときは、改めて公正証書遺言をつくり直すべきです。
また手間とお金がかかりますが、そうするのがベストです。公正証書遺言は法的に信頼性の高い、法的拘束力のある遺言書ですので、あなたが亡くなったら、その遺言書が撤回されたものであるという証明が難しくなるからです。
撤回とみなされる場合
遺言を自ら撤回しなくても、撤回したものとみなされる場合がいくつかあります。このことは民法で定められていますが、そのうちのひとつが次のような場合です。
1.前の遺言が後の遺言と抵触するとき
「抵触する」とは、法律的にいえば、ふたつの権利がぶつかっていることをいいます。わかりやすく言えば、前の遺言に書かれている内容と後の遺言に書かれている内容が違っている、矛盾している状態です。しかもどちらも法的には有効に成立しています。
例えば、前の遺言では「甲不動産はAに相続させる」と書いているのに、後の遺言では「甲不動産はBに相続させる」となっている場合です。これは明らかに内容が食い違っていますよね。しかもAさんとBさんの権利が対立しています。そして、どちらの遺言も有効に成立しています。
このような場合には、ふたつの遺言の食い違った内容を実現するわけにはいきませんので、食い違っている部分については、前の遺言は撤回されたものとみなされます。つまり、後の遺言の方が有効となります。
このことからも、遺言を書く際には、「日付が重要」ということがおわかりになると思います。
前回、遺言を撤回したものとみなされる場合のひとつとして、「前の遺言が後の遺言と抵触するとき」について書きましたが、他にも撤回したものとみなされる場合がいくつかあります。
2.遺言をした後で、その内容に反する行為をした場合
これは例えば、「甲にAの土地を遺贈する」と遺言したのに、Aの土地を他者に売却するなど、遺言の内容に反する行為をした場合です。
3.遺言者が故意に遺言書を破棄した場合
この場合には、その破棄した部分について撤回したものとみなされます。破棄には、破り捨てる、焼却する、元の文字が判読できないほど塗りつぶすなどがあります。
4.遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合
例えば、遺言者が遺贈すると遺言した家屋を取り壊したような場合です。ただし、その破壊した部分について、遺贈が撤回されたものとみなされます。
遺言の無効と取消し
遺言は、無効や取消しになる場合があります。
遺言の無効
遺言が無効となるのは、次のような場合です。
1.遺言の方式に不備があるとき
2.精神の障害で遺言能力が欠如しているとき
1については、遺言は民法という法律で遺言の方式が決められていますので、これに従った遺言書でないと法律的には無効となります。ですので、この方式を知ったうえで書かないと、せっかく書いた遺言書も無駄になってしまいますので注意が必要です。
あなたの遺言が効力を発揮するのは、あなたが亡くなってからですから、遺言が無効とわかってももはやあなたはどうすることもできまいのです。
2については、認知症や精神病など精神に障がいのある人の書いた遺言は原則無効となります。しかし、遺言を書いた時点で認知症であったかどうかなどの判断は、医師の診断書など証明するものが無い場合は難しくなります。
ただし、認知症などで成年被後見人となった人でも、一時的に事理弁識能力が回復したとみられる場合には、医師2名以上の立会いで遺言することができます。
公証人に作成してもらった公正証書遺言でも、遺言の無効を訴える裁判で無効とされたケースは少なからずありますので、公正証書遺言といえども万全とはいえません。しかし、自筆証書遺言に比べるとやはり信憑性ははるかにあります。
遺言の取消し
遺言は「取り消す」こともできます。遺言の取消しを、撤回と同じ意味で使っている場合も見受けられますが、法律上は遺言の「撤回」と「取消し」は同じではありません。
例えば、遺言を取り消すことができるのはどんな場合かというと、
- 騙されて書いたとき
- 強迫されて書いたとき
以上のような場合には、自ら取り消して遺言の効力を失わせることができます。「撤回」の場合は、自らの意思で書いた遺言ですが、この場合は、自分の意思ではなく他人の意思で書かされたものであることに大きな違いがあります。
当然のことながら、遺言は自らの意思で書くものですので、騙されたり強迫されたりして書いたものは、取り消すことができます。そして、相続人であれば相続権を失いますし、受遺者であれば受け取る権利を失います。
また、
- 遺言者が意識不明で意思能力を失っているとき
には、その法定代理人が取り消すことができますし、遺言者の死後は相続人がこれを取り消すことができます。
遺言執行者の指定
遺言執行者とは
遺言書を作成する際には、その中で遺言執行者を指定しておくべきです。遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に、遺言の内容に従って手続きをしてくれる人です。
遺言執行者の必要性
自分の書いた遺言が死後にちゃんと執行されるためにも「遺言執行者」を指定しておくことは必要です。
特に、遺言事項の中に、子どもの「認知」や相続人の「廃除」または「廃除の取消し」があるときは、遺言執行者がその手続きをすることになっているので、必ず遺言執行者を指定する必要があります。
これ以外の場合でも、次のような場合には、遺言で遺言執行者を指定しておくほうが安心です。
- 相続人間で利害が対立すると予想されるとき
- 相続人以外に遺贈を受ける人がいるとき
遺言執行者になる人
遺言執行者には、未成年者および破産者以外ならば誰でも指定することができます。指定はひとりでも複数でも構いません。一般的には法人は遺言執行者になれませんが、信託銀行は業務として財産に関する遺言の執行を引き受けることができます。
遺言執行者には、相続人や受遺者を指定することもできます。しかし、他の相続人や受遺者との関係上、遺言の執行がスムーズに運ばないことも考えられますので、利害関係がなく法律にも詳しい行政書士や弁護士などの専門家に頼む方が良いでしょう。
また、遺言作成時にふさわしい人がいない場合は、友人など特定の第三者に遺言執行者を選任してもらうように委託することもできます。
遺言執行者の指定を受けた人は、必ず受諾しなければならないわけではありません。拒否することもできます。
指定を受けた人が受諾するかどうか態度をはっきりさせない場合は、相続人は期間を定めて承諾するかどうか確答を求めることができます。返事がなければ受諾したものとみなされます。
指定された人は、受任した以上、正当な事由がなければ辞任することができません。正当な事由があるときは家庭裁判所に申し出て解任の判断を受けることになります。
家庭裁判所による選任
遺言者が死亡後、遺言に遺言執行者の指定がないときで、遺言執行者が必要と考えられるときは、相続人や受遺者など利害関係人の請求によって、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことができます。
また、遺言を執行する際に、遺言執行者に指定した人が亡くなっている場合にも、家庭裁判所に選任してもらうことができます。
遺言で遺言執行者の選任を委託された人は、適任者を探すことになりますが、見つからない場合は、同じく家庭裁判所に選任の請求をすることができます。
遺言執行者の任務
遺言執行者の任務は、まず相続財産の財産目録を作成して相続人に通知します。その上で、相続財産を管理し、遺言の執行に必要な手続き等一切を行います。相続財産の管理には、債権の回収や賃貸不動産の賃料の取立てなども含まれます。
ただし、特定の財産についてだけ遺言されている場合は、遺言執行者の任務はその財産についてだけとなります。例えば、ある土地の遺贈だけの遺言の場合は、その土地についての執行となります。
また、遺言の内容が相続財産の処分ではなく、子供の認知であったり相続人の廃除である場合は、その手続きのみを行うことになります。
要するに遺言書に書かれてあることを実現することが遺言執行者の任務となります。
一方、相続人は、遺言執行者の執行を妨げてはならないことになっています。もし相続人がこれに反した場合は、その行為は無効となりますので気をつけなければなりません。
遺言執行者の報酬は、遺言に書かれていればそれに従います。何も触れていなければ家庭裁判所に適正な額を決めてもらうことができます。また、遺言執行にかかった費用や報酬は相続財産の中から支払うとされています。
遺留分
遺留分とは
人は遺言で自分の財産を自由に処分できます。しかし、特定の相続人や他人に財産の全部をあげようとしても限界があります。なぜなら、相続人の生活を守るために、相続財産の一定割合を一定の相続人が取得することを民法で保証しているからです。これを遺留分といい、遺留分のある人を遺留分権利者といいます。
遺留分減殺請求
遺留分を持つ相続人は、遺言でたくさんの財産をもらった人に「私はもらう分が少ないから返してほしい」と請求できます。これを遺留分減殺請求権といいます。
遺留分減殺請求権を行使できるのは、相続開始および減殺すべき贈与や遺贈があったことを知ったときから1年以内とされています。行使しない場合には時効で権利が消滅します。また、そのことを知らなくても相続開始から10年経過すると、その権利は消滅します。
遺留分の減殺請求をするには、贈与や遺贈を受けた相手(受贈者、受遺者)に対して「遺留分の減殺をする」という意思表示をすれば、法律上その効力が生じます。訴えを起こしたり、家庭裁判所に調停を申し立てる必要はありません。
ただし、意思表示をした証拠を残すために、配達証明付き内容証明郵便で通知しておくのが良いでしょう。
遺留分減殺の順序
遺留分の減殺は当たり前のことですが、その限度で行います。遺言で侵害された遺留分が50万円なら減殺請求できるのは50万円です。すでに受遺者に遺贈されている場合には50万円の返還を求めることになります。だ遺贈されていなければ、遺贈の全体額から遺留分の額を差し引いた残りの分を相手に渡せばいいということです。
ただし遺留分の減殺は遺留分権利者が勝手にできるわけではありません。減殺の方法が次のように民法で定められています。
- 遺贈と贈与があるときは、遺贈を先に減殺する。それでも足りない時は贈与を減殺する。
- 遺贈が2つ以上あるときは価額の割合に応じて減殺する。
- 贈与が2つ以上あるときは、贈与の契約時を基準にして、後の贈与から順次前の贈与に対して行っていく
なお、減殺請求をしたときに、受贈者や受遺者が第三者に譲渡してしまっている場合などは、原則として第三者に減殺請求はできません。その場合は、受贈者や受遺者は遺留分権利者にその価額を弁償することになります。
遺留分の放棄
遺留分は放棄することができます。遺留分の放棄は、相続が開始する前と後では方法が大きく違います。
相続開始前の放棄
被相続人(遺言者)が生前に、推定相続人(遺留分権利者)に遺留分の放棄をさせる場合は、推定相続人が家庭裁判所に「遺留分放棄」を申し立てることが必要です。
申し立てると、家庭裁判所が放棄者本人の真意や放棄の理由などを調査し、遺留分の放棄を許可すれば、法律上効力が生じます。
相続開始後の放棄
相続が開始して遺言が有効となった場合でも、遺留分は必ず行使しなければならないものではありません。遺留分権利者が被相続人の意思を尊重して、遺留分を主張しなければよいだけです。具体的には、遺留分の減殺請求をしなければいいことです。その場合は、遺留分を放棄したことになります。
なお、遺留分権利者が複数いる場合、権利者の一人が放棄しても、他の権利者の遺留分がその分増えることはありません。全体の遺留分は放棄された分だけ減少することになります。
また、遺留分の放棄は相続放棄とは違うので、相続財産があれば、当然相続することができますので注意が必要です。