前回までは、遺言の撤回について書きました。遺言は、ほかにも無効や取消しになる場合があります。

遺言が無効となる場合

遺言が無効となるのは、次のような場合です。

1.遺言の方式に不備があるとき

2.精神の障害で遺言能力が欠如しているとき

1については、遺言は民法という法律で遺言の方式が決められていますので、これに従った遺言書でないと法律的には無効となります。ですので、この方式を知ったうえで書かないと、せっかく書いた遺言書も無駄になってしまいますので注意が必要です。

あなたの遺言が効力を発揮するのは、あなたが亡くなってからですから、遺言が無効とわかってももはやあなたはどうすることもできまいのです。

2については、認知症や精神病など精神に障がいのある人の書いた遺言は原則無効となります。しかし、遺言を書いた時点で認知症であったかどうかなどの判断は、医師の診断書など証明するものが無い場合は難しくなります。

ただし、認知症などで成年被後見人となった人でも、一時的に事理弁識能力が回復したとみられる場合には、医師2名以上の立会いで遺言することができます。

公証人に作成してもらった公正証書遺言でも、遺言の無効を訴える裁判で無効とされたケースは少なからずありますので、公正証書遺言といえども万全とはいえません。しかし、自筆証書遺言に比べるとやはり信憑性ははるかにあります。

 

遺言の取消し

遺言は「取り消す」こともできます。遺言の取消しを、撤回と同じ意味で使っている場合も見受けられますが、法律上は遺言の「撤回」と「取消し」は同じではありません。

例えば、遺言を取り消すことができるのはどんな場合かというと、

  • 騙されて書いたとき
  • 強迫されて書いたとき

以上のような場合には、自ら取り消して遺言の効力を失わせることができます。「撤回」の場合は、自らの意思で書いた遺言ですが、この場合は、自分の意思ではなく他人の意思で書かされたものであることに大きな違いがあります。

当然のことながら、遺言は自らの意思で書くものですので、騙されたり強迫されたりして書いたものは、取り消すことができます。そして、相続人であれば相続権を失いますし、受遺者であれば受け取る権利を失います。

また、遺言者が意識不明で意思能力を失っているときには、その法定代理人が取り消すことができますし、遺言者の死後は相続人がこれを取り消すことができます。