通常、相続人が誰もいないということはあまりないことですが、現実にはあります。

例えば、相続人が全員死亡していたり、みな相続放棄をしたり、相続欠格者、相続廃除者でその代襲相続人がいないときは、誰もいないという状況になります。これを「相続人不存在」といいます。

しかし、よく調べてからでないと即断は禁物です。やはり、戸籍をよく調べないといけません。

例えば、

  • 被相続人の親の戸籍まで遡って兄弟姉妹の有無を確認する
  • 戸籍の記載に漏れがないか確認する
  • 認知の請求前の子がいないかどうか確認する

というようなことをする必要があります。

その結果、被相続人に兄弟姉妹がいたり、その代襲相続人となるなる甥や姪がひとりでもいれば、その人の所在や生死が不明でも相続人不存在ということにはならないのです。

相続の相談に来られる方の中には、「相続人は誰々です」と自信をもって断言される方がいらっしゃいます。しかし、実際に相続の手続きをする際には、相続人が確定できるまで戸籍を取る必要がありますので、その点ご理解いただきたいと思います。

相続人が一人でも漏れていたら大変なことですからね。

相続財産の処分は

「相続人の不存在」の場合には、相続財産はどうなるのかについてお話しします。

相続人のあることが明らかでない場合は、相続財産を一種の法人とみなします。そして、被相続人の債権者などの利害関係者や検察官の請求によって、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。

選任された管理人は、相続財産の管理や清算手続きに入ります。その流れは次のとおりです。

1.家庭裁判所が相続財産管理人を選任したことを官報に公告します(第1回目の公告)。

2.第1回目の公告後、2か月以内に相続人が現れなければ清算手続きを開始し、債権者や遺言による受遺者などに一定期間内 (2か月以上)に申し出るように官報に公告します(第2回目の公告)。このとき、債権者などの相手がわかっていれば個別に通知します。そして、この期間内に相続人が現れれば相続を開始します。

3.第2回目の公告に定められた期間を経過しても相続人が明らかにならないときは、さらに、一定期間内(6か月以上)に相続人である権利を主張するよう官報に最終の公告をします(第3回目の公告。「相続人捜索」の公告)。

4.第3回目の公告によっても相続人が現れなければ、「相続人不存在」が確定します。これによって、申し出なかった相続人、債権者、受遺者はその権利を失います。

5.相続人不存在の確定後、3か月以内に特別縁故者の申し出があれば、家庭裁判所は財産分与の審判を行い、特別縁故者へ分与します。(すべて特別縁故者がもらえるわけではありません。)

6.残った相続財産は国庫に帰属します。

ようするに相続人が誰もいなくて、特別縁故者も申し出る者がいない場合には、相続財産は国のものになるということです。