遺言執行者の必要性

遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。

遺言執行者を必ず指定しなければならないということはありません。しかし、自分の死後、遺言の内容を実現するためには、遺言執行者を指定しておくべきです。

なぜなら、遺言者が亡くなった後、相続人の間で遺言を巡って争ったり、相続人以外で遺贈を受ける人がいると相続人が反発して、遺言がスムーズに執行されなくなるおそれがあるからです。

その点、遺言執行者を指定しておくと、相続人等の利害関係者は遺言執行者の指示に原則従わなければなりませんので、遺言執行者がいるとスムーズに事が運ぶことになります。

また、遺言の中に子供の「認知」相続人の「廃除」廃除の取消しがある場合には、法律では遺言執行者がその手続きをすることになっているので、必ず遺言執行者を指定する必要があります。

遺言執行者の選び方

遺言執行者の選び方には次の二通りがあります。

1.遺言作成者が遺言書の中であらかじめ指定する

遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。(民法第1006条第1項)

遺言書の中で遺言執行者を指定できます。遺言執行者は、複数でも指定できます。

また、特定の人を指名せず、遺言執行者を選任する人を指定することもできます。

2.相続開始後に相続人等の申立てにより家庭裁判所で選んでもらう

遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。(民法第1010条)

遺言者が死亡後、遺言に遺言執行者の指定がないときで、遺言執行者が必要と考えられるときは、相続人、受遺者や債権者など利害関係人の請求によって、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことができます。

また、遺言を執行する際に、遺言執行者に指定した人が亡くなっている場合にも、家庭裁判所に選任してもらうことができます。

遺言で遺言執行者の選任を委託された人は、適任者を探すことになりますが、見つからない場合は、同じく家庭裁判所に選任の請求をすることができます。

家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうためには、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立手続きをしなければなりません。

遺言執行者に誰を選んだらよいのか

では、誰を遺言執行者にすればよいかということですが、遺言執行者には、未成年者および破産者以外なら誰でも指定することができます。

遺言執行者には、相続人も就任することが可能です。しかし、相続では利害関係が対立する可能性があります。このため、特定の相続人が遺言執行者になると、トラブルになる可能性もあります。

信頼のおける友人や知人に頼んでおくのもいいかもしれませんが、できれば行政書士、司法書士、弁護士のような法律に詳しい者を指定しておくといいでしょう。

法人は遺言執行者になれませんが、例外として信託銀行は業務として財産に関する遺言の執行を引き受けることができます。

遺言執行者の指定は一人でも複数でも構いません。事前に同意を得ておく必要もありません。

ただし、遺言執行者の指定を受けた人は、必ず受諾しなければならないわけではありません。拒否することもできます。

しかし、遺言執行者が受諾するかどうかはっきりしない場合があります。そのような場合には、相続人は期間を定めて承諾の確答を求めることができます。そして返事が無い場合には受諾したものとみなされます。

遺言執行者に指定された人は、受任した以上、正当な事由がなければ辞任することはできません。ただし、正当な事由がある場合には、家庭裁判所に申し出て解任の判断を受けることになります。

遺言作成時にふさわしい人がいない場合は、友人や知人など特定の第三者に遺言執行者を選任してもらうように委託することもできます。

しかし、遺言執行者の選任を第三者に委託することは、遺言者は亡くなっているので誰が遺言執行者になるかわからないわけですから、あまりおすすめできません。やはり自分が信頼でき納得できる人を決めて遺言執行者に指定しておくべきでしょう。