遺言で自分の全財産を他人に譲ることもできます。法的に無効となることはありません。しかし、法定相続人には遺留分という最低限の相続分がありますから、この遺留分を無視した遺言を書くことは却ってトラブルの元になりかねません。

なぜなら遺留分権利者である相続人は、法律で遺留分減殺請求という権利が認められているからです。遺言を不服とした相続人が遺贈を受けた人に対して遺留分減殺請求して話がつかないとなると、次は家庭裁判所で遺留分減殺による物件返還調停をすることになります。

調停は話し合いですが、これでも話がつかない場合には裁判で争うことになります。これは民事訴訟となり地方裁判所(請求金額が140万円以下の場合には簡易裁判所)で争うことになります。こうなるともうトラブル以外の何物でもありません。

本来、相続財産は遺族の将来の生活保障的な意味合いを持っていますので、遺族の生活のことを全く考えないような遺言は道義的にもどうかと思われます。

遺言を自分で書こうと思っている人は、亡き後に自分の書いた遺言がトラブルの元にならないよう遺留分に配慮した遺言を書くべきです。

遺言を書く大きな目的のひとつはトラブルを回避することです。その遺言が却ってトラブルを引き起こすような皮肉な結果とならないように気をつけましょう。